金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜


それから、私は月に一、二度の頻度で“進路指導”と言う名の拷問を受け続けた。


何度されても慣れることはなかった。

むしろ回を追うごとに嫌悪感は増していた。


私はそれでも、親にも友達にも……相談できなかった。




「――――なぁ、キス……させてくれないか?」



いつもの進路指導室。

高校入試の迫っていたある冬の日。

それまで脚を触るだけだった岡澤は、いきなりそんなことを言って私に近づいてきた。


私にキスの経験はなかったけれど、いつか本当に好きになった人と、ドキドキしながらしてみたい……
そんなささやかな夢くらいは持っていた。


一方的に体を触られるのと、唇を重ねるのは次元が違う……


そう思った私は、その時初めて、岡澤に反抗した。