進路指導室には窓がひとつしかなく、それすら背の高い本棚に隠されていたのでとても息苦しく感じたのを覚えている。
蛍光灯を点けても薄暗くて、ほこりっぽくて。
そんな空間で、岡澤と一つの机を挟んで向かい合わせに座った。
机の上には何の資料も本もなく、岡澤がただ厳しい表情で私を見ていた。
「どうしても……S高に行きたいんだな?」
「はい!行きたいです…!」
迷いのない私の返事を聞くなり、岡澤は椅子ごと私の隣に移動してきて突然肩を抱いた。
ぷん、と30代の男のにおいがして、急に居心地が悪くなる。
「せん……せ?」
「大丈夫、三枝はただじっとしていればいい。そうすれば、内申点を良くしてやるから」
岡澤のかさついた手が、私の太ももをゆっくりとなでた。
私は……呼吸も心臓も、なにもかもが止まってしまったような気がして、身動きが取れなかった。

