real world



悠樹は妹が死んだ日、


俺にこう言った。




『僕は花音との約束を全うするつもりだから、花音の前から、消えるつもりはないよ。』




恋奈ちゃんが死んで


悲しくないわけがない。

花音が自分を責めて、


辛くないわけがない。


それでも、


お前は花音との約束を守ると言った。




自分にできる事をすると言った。




なら、俺は?






「…直人は、直人に、できる事を…すれば、いい。


焦るなよ、直人だって…“見ているだけ”っていう辛さと、


闘って…きたん、だろ?」






そう言って激しくせき込む。


こいつ、そう、こいつも。


優しすぎる。


馬鹿じゃねぇの?


見てるだけなら、


幼稚園児でもできんだよ。



神楽は自分の代わりに、

いや、囮として使われた自分を助けるために、相手の思惑通りに撃たれた悠樹の口に人差し指を当てて、



『―喋らない方がいい。―』



そう言った。そして俺の方に振り向くと、



『―君は、私を信じるのかい?―』



そう聞いてきた。



結局“見ているだけ”。

俺は何にもできない。


ならせめて、


みんなの意志を、


そして自分の願いを、




「…はい。」




主張してみようか。