real world



俺は花音のそばにいた。

ずっと。


なのに彼女は、


目の前の死にかけの悠樹しか見えていない。





“お願いします。”





そう言って花音が頭を下げたあの映像が頭から離れない。



花音は優しい。


だから、


甘えてしまう。


頼ってしまう。


寄り掛かってしまう。



そんなんじゃだめだって、わかっていても。



花音は、誰にも頼らなかったのに。


ずっとずっと


独りで。



「早く、縫って下さい。アルコールはそのビンにありますから。」



上杉。


お前も、


人を甘やかせる。そのかわり、誰よりも自分を責める。



なら、


俺は?


俺は、何ができる?



「直人…?」



なぁ、


教えろよ。


悠樹。



いま、


俺に、



何ができる?