「りーん、俊にお弁当届けて来てー」


「えぇ~」


リビングでゴロゴロとテレビを見ながらくつろいでいると、お母さんがうしろから話しかけてきた。


「お願いね。
私いまから部屋を片付けないといけないの」


「む~」


プク~と頬を膨らまして、仕方がなくテーブルの上に置かれた布に包まれたお弁当を持つ。


「じゃぁ、行ってくる」


「気をつけてね」


サンダルをはいて家を出る。


「……」


うわー…。


やっぱり夏は嫌いだ。


家に出たとたん蒸し暑い温度が身体中をむしばむ。


「めんどくさいな~。
アイス食べた~い」


だるくて足が重くなる。


あー、アイス、ジュース、そうめん、冷やし中華…。


なんでもいいから冷たいものが食べたくなる。


だからと言って、今の私のお小遣いは全部で78円。


…ジュース一本も買えない。


「はぁ~」


しょうがない、諦めよう。


よし、早く届けて、また家でゆっくりしよう!


だらだらと進めていた足を少し早くした。