恋をしたのは澤村さん


ケータイを操って毎日のように顔を会わす従兄に電話した。

『はい、もしもし』

「岩ちゃん?あたし、葵だけど」

『どうしたんだよ。珍しいな』

驚いたようすもなくただ、可笑しそうに笑う岩ちゃんは少し酔ってるようだ。
まぁ、もう大分遅い時間だし、当たり前か。

「あのね、岩ちゃん。
この前の答えでたよ。逃げてるだけじゃダメなんだよね」

『………子供じゃないんだから楽に考えたりしてないよな』

お前の選択1つですべてが変わるぞ。
そういってるように聞こえた。

「うん。
でもね、今さら気づいても遅いんだ」

澤村さんがあたしに凄く気を使ってくれたこと。悩んで悩んで悩んだ末あの答えに行き当たったこと。

「子供じゃないんだから、もう少し信頼してほしかったなって今は思うだけ」

この答えが間違ってるか、なんてもう確かめようがない。
あたし、たくさん間違えてきたから。
たくさん傷つけてきたから。