「…そんな大事なこと聞いてないよ」
「だって、言ってねぇもん」
ずるい、最後まで島津木くんは優しい。
最後まで優しい人で通してくれようとしてる。
「……島津木くん、ストラップありがとうね。
他にもいっぱい……ありがとう」
「……最後のお別れみたいで嫌だな」
くしゃりと顔を歪めて島津木くんはもう一度あたしの肩に頭をおいた。
それはまるで隠すようで。
溢れる言葉を思いを涙を自分のなかに流し込むように。
「島津木くん、顔あげて」
後二ヶ月でお別れなんて。
悲しいのに心のどこかで安心してるずるいあたしがいる。
「……好きだよ…」
嘘じゃない。
もっと時間があれば、もっと早く仲良くなれてたら。
あたしはきっと島津木くんとちゃんとした恋人になれてたんだ。
「葵、嘘でも嬉しい」
「…嘘なんかじゃないよ」
信じてもらえないかもしれないけど。
あたしたちは出会う順番が逆だったらどんなに良かったか。
「あたしも、ちゃんとけじめつけようと思うの」
だから、今別れて。
なんて我が儘すぎるよね。
あたしの我が儘でこんなにも苦しめたんだもん。
だから、別れが来る二ヶ月後まで島津木くんの望むように、私が望むように振る舞わさせて。
「………葵ならきっと頑張れるよ」

