恋をしたのは澤村さん




久々に帰った実家で昔のように過ごしてまたいつもの日常に戻った。
嫌みな上司の小言を聞き流し、押し付けられた仕事に悪態をつきながらも取りかかる。
まさにいつもの日常のはずだった。
けれど、

「あ、乗ります!待って待って!」

上司に言われた急ぎの用で外にいこうとしたのにエレベーターは目の前で無情にも閉まり仕方なしに次のエレベーターを待った。
その用事を終えたすぐ直後、出先から戻ってきた私のデスクにはそれを埋め尽くすほど積まれた今にも崩れそうな書類の山。
どう言うことかと隣の席の先輩に問えば来週末までに纏めろとのこと。
そして昼休憩に同僚と会社からすぐ近くのカフェでランチをしていたときだった。

「わっ!?」

横を通ったウェイトレスが持っていた飲み物がバランスを崩し自分の服に雫がかかった。
幸いにもそれは水で派手なことにはならずにすんだ。
謝り倒すウェイトレスさんにも申し訳なくなりなんとかその場を切り抜けた。

「なんか今日はついてないかも…」

ゲッソリとした私を同僚がドンマイと励ます。

「確かに、いつも以上についてないわよね」

「私がいつもついてないみたいに言うのやめてよ」

打ち込みを終え、十分の一ほど片付いた書類をファイリングし、新しいファイルを手に取った。

「ごめんごめん。でも本当についてないわよね」

そういった同僚はチラリと時計を確認して仕事に向き直った。