恋をしたのは澤村さん


「田中が選んだ答えを責める人なんてもういないだろ」

短くなった煙草を携帯用のタバコケースに棄てて望月くんは立ち上がった。

「もう十分すぎるくらい反省したんだろ」

震えた指先をきゅっと反対の手で握って言葉を探した。反省して償えることじゃないと思う。

「わ、たし…は」

島津木くんを自分の身勝手な我が儘の犠牲にした。
その事実は消えない。
苦しくなって俯いた。
指先は力強く握りすぎて少し色を失っていた。

「いつまでもそうやってるから進めないんだよ。お前もアイツも」

追い討ちをかけるように望月くんはあたしにさらに言葉を被せた。

「幸せにしたいなら、アイツが望んでることくらい叶えてやれよ。それが親友なんじゃねぇの」

親友。
その言葉はあたしと島津木くんをつなぐ大切な言葉。
島津木くんが望んでいること。
それはあたしが幸せになること。
幸せになって、暮らすこと。

「なっていいのかな…」

まだ間に合うのかな。
あたしは幸せになれるんだろうか。
ユラユラと視界が揺れはじめてさらにキツく手を握った。

「なっていいだろ。少なくとも俺は、幸せになった」

私の考えを見抜いたように望月くんは言う。

「そう言えるのは楓香がいたから?」

ゆっくりと視線をあげて望月くんを見上げる。
望月くんは口に手を当て考える素振りを見せた。