「田中さ、もういいの?」
唐突にそう言った彼の言葉の意味が分からなくて首を傾げた。
もういいってなんだろう?
望月くんは何に対してもういいって言ってるんだろう。
「……もういいって?」
「俺は、そこまで詳しくねぇけどあいつ等から少しだけ話を聞いたことがある」
話の内容を明確に言わない望月くんの言葉がうまく伝わってこない。
「ごめん、さっぱり分かんないや」
そう言うと彼は空を見上げてまた口から煙をプカリとはいた。 そのまま空を見上げてなにも言わない望月くんを見ていた。
本当は彼が何を言おうとしてるのか、何となくは分かってた。それがとても言い辛いことだってことも。
それでも狡い私は自分からそのことを喋るのを避けたくて彼が口を開くまで煙草からユルユルと上がり空に溶けていく煙を見ながら待った。 その煙は頼りがいがなくただ私を複雑な気持ちにさせていった。
一分くらいの沈黙の後、彼はポツリと呟いた。
「……十年前のこと…」
思った通り彼は、はっきりと言わなかったけれど。
その言葉だけで十分だった。

