恋をしたのは澤村さん


「ほら、もういかなきゃ」

島津木くんの手を引いて促す。
もう式が始まる時間だから。

けれど、島津木くんは俯いて動かなくなってしまった。
困ったあたしは色んな言葉を考えたけどさっきと同じことを言った。

「幸せになって」

そう言えば島津木くんは俯いた顔を勢いよく上げた。

「充分すぎるくらいもう幸せだよ……っ!
だから、葵にも…」

そう言いかけた島津木くんの言葉は最後まで言えずに終わった。
式が始まるからと彼女さんが、いや、お嫁の瑠璃さんが呼びにきた。
瑠璃さんに頭を下げて会場に戻ろうとした。

でも、どうしても足が進まなくてあたしは外に出た。