恋をしたのは澤村さん


だって、あたしが幸せじゃない、何て言ったら結婚やめるでしょ?

心の中でそう思っていると島津木くんは泣きそうな顔をした。

「…葵……おれ」

「それ以上言っちゃダメだよ」

言っちゃダメ。
それは彼女さんを傷つけるだけじゃない。
色んな人を傷つけちゃうから。

「あたしは島津木くんの笑った顔がみたい」

背伸びをしてたあの頃。
君は何度もそう言ってはあたしの側にいてくれた。

「島津木くんが幸せな姿をみたい。幸せな日々を送ってほしいの」


「葵……でも、それじゃ…」

言い淀む島津木くんの手を握った。
『俺だけが幸せになる』?
そう言いたいんだよね。

言いたいことが伝わってきてあたしはクスリと笑った。

「ううん、違うよ。島津木くんだけが幸せになるんじゃないよ。島津木くんが幸せだからあたしも幸せになれるんだよ」

あの時君はあたしの幸せを願ってくれた。
そして、今も。
だから、あたしはその優しさに重ねたい。

あたしだけじゃなくて、君の幸せも。
重ねて君の未来を願いたい。