「島津木くん?」
ソワソワと椅子に座っているその姿が可笑しくてコンコンと部屋のドアをノックした。
控え室にいた島津木くんは白のタキシードに身を包んでいていつもと違った雰囲気だった。
「葵!来てくれたんだ!」
振り向いた彼は嬉しそうに笑ってあたしの側まで歩いてきた。
その顔はあの頃から変わらない。
「来るに決まってるよ。あたしは島津木くんの一番の親友でしょ?」
そう言えば彼は更に嬉しそうに笑ってくれた。
そうそう。
今日の主役は島津木くんなんだから笑ってなくちゃ。
あたしが微笑むと島津木くんがおもむろにあたしの手を握って不安そうに言った。
「…葵、今幸せ?」
ギクリとした。
幸せ、そう聞かれれば返事に困る。
一人暮らしにも慣れて、仕事も今じゃ起動に乗ってる。
でも、何かが足りない。
それが何なのか自分でもわかっているから何も言えなかった。
「…幸せだよ。充分すぎるくらいに」
少し迷って嘘をついた。
島津木くんはこの嘘をきっと気づいてる。
でも、嘘をついた。

