あたしの言葉にポカーーーーンと間抜けな顔を晒しつつもクスリと笑ってドアの横を叩いた。 そこには古びた表札に綺麗な字で名前が書いてあった。 「澤村、さわむら てつ」 「さわむらさん……」 さわむら…さわむら…澤むら…澤村…。 名前を覚えるように口の中で何回も繰り返す。 お礼をいって階段を降りていった。 パッと顔を上げれば澤村さんと目があってヘラりと笑いをこぼした。