玄関に戻って、サンダルに足を通した。そして、キーケースから太一の部屋の合鍵を取って棚の上に乗せる。
もう、ここに来ることはない。
これで最後。
もう、終わらせよう。
「待てよ」
玄関を出ようとした時、耳元で低い声が聞こえた。
それと同時に腕を強く引っ張られる。
「離してっ……!」
「マジで悪かったって……ごめん」
「もう、無理だって」
切ない声を出す太一に、あたしは淡々と返事を返す。
その度に掴まれた腕に力がこめられて、胸が張り裂けそうな思いだった。
どうして追いかけてくんのよ。
今さらそんなの望んでないから。



