ホテルに向かって歩いている時も、ホテルに着いて部屋に入ってからも、リュウはあたしの顔を一度も見なかった。
なによ、元々下心丸出しだったくせに。
どうしてそんなに怒ってんのよ。
「シャワー浴びて来い」
部屋へ入った瞬間、リュウの手がパッと離れた。
だだっ広いその綺麗な高級感のある部屋に、一晩いくらするんだろうという堅実的な考えが脳裏をよぎる。
ボロボロな状態の時でも、そんなことを考える余裕は残されているもんなんだね。
なんだか笑える。
一言も言葉を発さないまま、促されるようにバスルームへ向かった。
「……ウソっ」
鏡に映る自分の顔を見て驚愕した。
最悪。
マスカラが落ちて目の周りが真っ黒になってるし、取り乱したように髪はボサボサ。
泣いたせいで目がパンパンに腫れて、涙と鼻水で髪が濡れてる。
前髪は額に張り付いてるし……
正直、女として終わってる。
こんなあたしに下心なんて起こらないよ。
そう思うほど、今のあたしは悲惨な姿をしていた。



