「妃芽は帰る必要ねぇよ。俺、離さねぇって言っただろ?」
そう言って腕を強く引っ張られた。
あたしの体は簡単にリュウの胸にすっぽり収まる。
「で、でも……っ」
色々準備ってものが…
リュウは自分の膝の上にあたしを座らせて、向かい合わせになって見つめて来た。
「やっと会えたのに、離してたまるかよ」
後頭部に回された手が、力強くリュウの唇目掛けて引き寄せられる。
考えつく暇もないくらい早く、あたしの唇はリュウの唇によって塞がれた。
「んっ……」
久しぶりに唇に感じるリュウの温もり。
もう一方の手は背中に回されている。
キスだけで、こんなにも温かい気持ちになれるんだね。
体の繋がりがなくても、心から幸せだって今なら感じられる。
貪るように激しく求めて来るリュウの唇を、あたしは必死に受け止めた。
激しく繰り返されるキスに、体は正直に敏感に反応する。
熱くなっていく体に、理性がどんどん失われていく。
黒のスーツ姿のリュウに、胸の奥がキューッと締め付けられてドキドキした。
キスを落としながら、リュウの手はパーカーのファスナーに差し掛かる。
あっという間にそれを脱がせると、Tシャツの隙間からリュウの手が背中に滑り込んで来た。
思わずビクッと反応する。
「妃芽、背中弱すぎ」
そんなあたしに、リュウは余裕そうにフッと笑った。



