「あたしが脅されたって……どうして知ってたんですか……?」
VIPルームへ続く階段を下りながら、前を行くイッキさんの背中に問い掛ける。
リュウは接客に戻ってしまったので、ここにはあたしとイッキさんの2人だけだった。
「電話で楽しそうに姫ちゃんのことを話す美雪を見たって奴が俺らの中にいてさ。そいつからのタレコミで発覚したんだよ。あ、そいつ以外には俺しか知らないから安心してね」
「…………」
なんか申し訳ないな。
今回の件で、色んな人に迷惑掛けちゃったんだ。
遠いのに、イッキさんはわざわざあたしの地元まで来てくれた。
タレコミをしてくれた人だって、色々悩んだのかもしれない。
身勝手な行動を起こしたことを、改めて反省した。
「会いに来てくれて助かったよ。このままだと、あいつマジで潰れてたかもしれないし」
振り返りながらイッキさんが言った。
優しい優しい笑顔だった。



