ふわっと漂うスカッシュ系の香りに、懐かしさで胸が苦しくなった。
1ヶ月しか経っていないのに、もう何年も会っていないような気がする。
すぐ後ろに感じるリュウの気配に、胸がチクチク痛んだ。
恐る恐る後ろを振り返ると、無表情のまま鋭いオーラを放つリュウが太一を睨み付けるようにして立っていた。
「辰巳く〜ん、入って入って!汚いとこなんだけど、今日掃除したばっかだから。あ、弟の部屋なんだけどね」
顔を下に向けて立ち尽くすあたしの後ろに回り込んだマヤさん。
黙ったまま言葉を発しようとしないリュウ。
太一とみゆちゃんは、あたしの後ろにいるであろうリュウをポカンと見つめていた。
やたらテンションの高いマヤさんに、後ろからため息交じりの低い声が聞こえた。
「あんたに用はねぇんだよ」
声を聞いただけで、胸の奥が締め付けられる。
不意に涙が溢れて来た。



