前を向いたまま体が固まる。
どうしても、後ろを振り返ることが出来ない。
マヤさんが言う辰巳って……。
拳をグッと握り締め、唇を一の字に結ぶ。
ドクン ドクン
ドクン ドクン
「辰巳く〜ん、なんでマヤがここにいるってわかったの〜?わざわざ会いに来てくれなくても良かったのに。言ってくれたらお店まで行ったのに〜」
はしゃぐマヤさんの声が耳をすり抜けた。
お店って……ホストクラブのこと?
一気に女の顔になったマヤさんを見て、絶対そうだと確信した。
リュウ、マヤさんに会いに来たの……?
だから、ここにいるの?
そう思うと、途端に胸が締め付けられた。



