「あ、よっ、よろしく……お願い……します」
たじたじのみゆちゃんをよそに、あたしは早くここから立ち去りたい気持ちでいっぱいだった。
こんなことをしている場合じゃない。
これ以上、ここにいる意味もない。
うまくいったんなら、あたしはもう用済みのはずだもん。
「あの、あたしもう帰っ」
そう言おうとした時だった。
「きゃああ!辰巳君だ〜」
さっきとは打って変わって、マヤさんの甲高い声がそこに響いた。
表情もさっきまでとはまるで違う。
パアッと華やいだような顔は、さっきまでの不機嫌さをまるで感じさせなかった。
それよりも
辰巳って……?
まさか……。
背中の方に意識を集中させる。
近付いて来る足音に、鼓動がありえないくらい飛び跳ねた。



