なんだか、怒り損な気がするのはあたしだけ?
「待ってよ……まだ帰らないで!」
扉に背を向けて立ち去ろうとしたあたしに、みゆちゃんの声が届いた。
思わず足を止めて後ろを振り返る。
「あたしが言っても説得力ないかもしれないけど……太一はあなたのこと大事にしてると思うよ?後は勝手にして」
なにが楽しくて2人の仲を取り持つようなことをしたんだろう。
「待ってってば‼本当にタイ君のお姉さんかどうか、あんたが見て確かめてよ。お姉さんと会ったことあるでしょ?」
紹介してくれるとまで言ってるのに、まだ太一を疑ってかかるの?
それに、あたしに確かめろって……。
ふざけんなと文句の一つでも言ってやりたかったけど、その前にみゆちゃんが口を開いた。
「確かめてくれたら、あのネタ週刊誌に売るって話忘れてあげる。別れろって言葉も取り消すから」
すがるような瞳であたしの顔を覗き込むみゆちゃんには、プライドもなにもあったもんじゃない。
実に不愉快極まりない発言だけど、なんだか放っておけなくてその場から動けなかった。



