緊張から体全体が震える。
ドクドク ドクドク
急激に鼓動が速くなっていくのを感じた。
「辰巳は今接客中で……良かったらこの中で待っててくれる?」
振り返りながら黒髪の男の人は優しく笑った。
「あ……え……っと、でも」
いいの……かな?
あたし、思いっきり仕事の邪魔になるんじゃ……
ここって、スタッフ専用の部屋だよね……?
どうしようか悩みあぐねていると、黒髪の男の人は笑顔のまま言葉を続けた。
「いいよ、みんな出払って誰もいないから。それに……君が来てくれるのをみんな心待ちにしてたから」
みんなって……?
心待ち……?
なんで?
わけがわからなかったけど、とりあえず促されるまま中へ入った。



