押し黙るホストさん。見知った顔がないことに不安を覚える。
お願いだから、なにか言って?
一番後ろにいた人は、血相を変えて逃げるようにお店の奥に入って行っちゃった。
そんなに珍客が来たと思われたのかな?
そもそも、今って仕事中だよね……?
私用で来ちゃダメだったんじゃ。
いや、普通に考えたらそうだよ。
あたし、そこまで考えが及んでなかった。
感情だけで突っ走って来たことを、ここで後悔した。
すると奥の方からさっき逃げて行ったホストさんと、黒髪をツンツンにアレンジした一人の男の人が現れた。
どう見てもその黒髪の人は、オーラと迫力がある。
その人はあたしの前で立ち止まると、優しくニコッと微笑んだ。
「お待ちかねでしたよ。とりあえず、どうぞ」
そう言って中へ導かれ、黒髪さんの後に続いた。



