確かに、イッキさんの言う通り。
一言も別れを告げずに部屋を出たあたしの行動は最低なもの。
だけど、それを言えたら苦労はしない。
言えないから、黙って出て来たのに。
胸が締め付けられて苦しい。
こんなにもまだ、リュウのことが好きなんだ。
返事をしないあたしを見て、イッキさんは言葉を続ける。
「自分の意思でそう決めたとしても、理由を伝えるのは当然のことだよね?姫ちゃんもさ、理由告げられずにいきなり出て行かれたら納得出来ないでしょ?」
うっ
「まさか、なにも言わずに去ろうとしてたわけじゃないよね?」
ううっ
「姫ちゃんは、理由を伝えないで相手を傷付けるような子じゃないよね?」
にっこり微笑んでそう言ったイッキさん。
まさに天使のような悪魔の微笑み。
そう言われたら、なにがなんでもリュウに直接言わなきゃって気にさせられる。
言葉で精神的に揺さぶりをかけて来るイッキさんはまるで策士だ。



