電話している人物を探るべく、柱の陰からそっと様子を窺う。
あの子、確か……。
辰巳さん指名の太客だな。
若いのに相当金を持ってて、辰巳さんに貢ぎまくっているという俺達の間でウワサの子。
暗くて良く見えないけど、あの後ろ姿は間違いない。
「本当⁉もう未練ないの⁉じゃあみゆのこと好き?」
甲高い声が辺りに響く。
辰巳さんに惚れ込んでいるんだと思っていたのに、そうじゃなかったのか?
他に本命がいたのか。
「うん、嬉しい‼わかった。じゃあ明日待ってるね‼おやすみ」
そう言って電話を切った彼女は、すぐにまたスマフォを操作しそれを耳に当てた。
またどっかに電話すんのか?
盗み聞きなんてダメだと思いつつも、どうしても気になって動けなかった。



