けどまぁ、全てを捨てて逃げ出す覚悟があれば
父親からは逃げ出すことが出来ただろう。
強い意思があれば、話は別だったのかもしれない。
住む場所を与えられ、父親の目の届く範囲にいる時点で所詮は籠の中の鳥。
言い換えれば、中途半端に逃げ出して中途半端に甘えてるだけ。
こんなんじゃいけねぇ。
いつか絶対自分の足で立ち上がって、幸せな人生を歩んでみせる。
全てを投げ出してでも妃芽を守りたい。
幸せにしてやりたい。
地位も名誉も金もいらねぇ。
俺はお前さえいればそれで幸せだったんだ。
心に空いた穴が、誰にも埋められなかった寂しさがお前の笑顔で満たされていく。
もう戻れないと思った。
いくら泣いてすがられても、俺は絶対あいつを手離せない。
温もりを知らなかった頃に戻ることを考えただけで、頭がおかしくなりそうだった。



