父親の存在を全く聞かされていなかった俺は、最初戸惑いを隠しきれなかった。
こいつに聞かされて初めて、母親がこいつの愛人で俺がその子どもなんだと知った。
そして、この男が代々続く資産家の跡取りだということもこの時知らされた。
まぁ、アパートの前にリムジンで乗り付け、ボディガードをはべらせて来たから予測は出来てたんだけどな。
「養子になれ」
本妻との間に娘しかいなかった父親は、俺にそう言った。
今まで連絡の一つも寄越さないで、今になって都合のいいこと言いやがってと普通の奴なら断るだろう。
恨み?
そんなもん最初からない。
父親の存在を今までなに一つ知らなかったんだ。
知らなければ、そんな感情を抱くことはない。
それよりも、母親に対しての憎しみの方が強かった。



