顎先をベッドに乗せたリュウの顔が目の端に映る。
自然とそっちに向き直ったあたしは、口元を緩めてリュウに微笑みかけた。
心配させたくなくて、必要以上に口角を引き上げる。
「そんな顔すんなよ……行きたくなくなるだろ?」
自分がどんな顔をしているのかはわからないけど、あたし的には笑ってるつもりだ。
リュウにはどんな風に見えてるの?
「あたしは大丈夫。遅刻しちゃうよ……?」
その言葉に腕時計をちら見したリュウは、本当にギリギリの時間だったのか名残惜しそうにしながらも渋々立ち上がった。
「行って、らっしゃい」
手でスーツを整えたリュウの背中に向かって小さく呟いた。
するとリュウは、いつもぎこちなく振り返って寂しそうに笑うんだ。
そして、必ず
「イイ子で待ってろよ」
そう言って部屋を出て行く。



