差し出された手を見て固まっていると、その手が強引にあたしの手を掴んだ。
そして、ゆっくり歩き出す。
「今日はもうお店に行くの?」
まだ夜の7時前。
いつもならリュウは8時半くらいに部屋を出る。
たまに夕方から出て行く日もあるけど、なにをしているかは敢えて聞かない。
こんな中途半端な時間に飲み終えるのは珍しいことだった。
マンションがある方へ向かっているということは、このままあたしを送ってお店に行くかお客さんと会うか
そのどっちかだと思う。
薄暗い路地の中、月明かりに照らされたリュウの横顔にドキッとする。
漂う雰囲気は優しくて色っぽくて、それに人を寄せ付けるようなカリスマ性のあるオーラ。
普段はキリッとしてクールに見えるのに、2人きりの時にだけ見せるとびっきり甘い笑顔は、あたしだけが知ってるリュウの顔。
そのギャップに、いつも胸を撃ち抜かれていた。
なんでもない振りをしながら、心奪われていたんだ。



