「……なんでもないですよ」
泣きたい気持ちを堪えて、あたしは精一杯明るく振る舞った。
もしかしたら、ちょっと素っ気なくなってしまったかもしれない。
わざとらしく目をそらしちゃったし、顔だって引きつっていたかも。
「そーお?なんでも言ってね?恋のこととか……アドバイス出来ることがあるかもしれないし」
そんなあたしに微笑み掛けてくれるユメさんの優しさは、ストレートに胸に響いて。
堪えたはずの涙が溢れ出しそうになった。
「ありがとう、ございます」
小さくそう呟くことが、今あたしに出来る唯一のことで
それ以上なにか言うと、涙が零れ落ちてしまいそうで躊躇われた。
唇が震える。
握り締めた拳も震えていた。
その時ふわっと頭に乗った優しい手の感触に、俯かせていた顔を上げた。
「ちょっと早いけど、そろそろ出るぞ」
くしゃりと髪を撫でた後、まだスツールに腰掛けたままのあたしを残してリュウはレジへと行ってしまった。



