「夜道は後ろに気を付けろって注意しとくといいよ。妊娠中に転んだら大変なことになるでしょ?」
「や、めて……そんなこと。犯罪だよ……?」
同じ女性として信じられない。
どこまで根性腐ってるの?
「みゆがやるわけないでしょ?金さえ積めば、その道のプロがいくらでもやってくれる」
そんなこと、させてたまるか。
あたしのせいで誰かが傷付くのなんて嫌だ。
「……別れるから」
お願いだから、周りの人を傷付けるのだけはやめて。
「やっとその気になってくれた?一週間以内に別れてみゆの前から消えてね」
満足そうにニコッと笑ったその顔は、今日一番の微笑み。
「その代わり、絶対にあたしの周りの人になにもしないって誓って!」
必死にそう言ったあたしは、力強い眼差しを彼女に向けた。
「あんたがちゃんと別れてくれたらね」
「わかった、約束する」
それ以上耐えきれなくて、背中を向けてこの場を離れた。
怒りと悔しさで、頭がどうにかなりそうだった。



