「いらっしゃい」
見慣れたヒロさんの優しい笑顔が疲れを吹き飛ばしてくれる。
相変わらずここは今日も満席に近かったけど、運良くカウンター席が一つだけ空いていた。
「いつものでいい?」
なにも言わないでも、ヒロさんはあたしの好みのカクテルを熟知してくれてる。
シェイカーを振る姿が、今日はやけに張り切っているように見えた。
「なんか良いことでもあったんですか?」
キッチンにいるヒロさんは、あたしの前に立ってカクテルをグラスに移し変えている。
その顔は緩みっぱなし。
「わかる?実は良いことがあって」
そう言って、さらに目を細めるヒロさん。
わかりやすすぎでしょ。



