リュウの唇がだんだん首筋に移動し始めたところで、あたしはやっと言葉を発した。
「んっ……やめ、てっ」
体をよじって逃れようとするあたしを、リュウの腕が強く制した。
「誰指名したんだよ?ノボルか?」
冷たく鋭いリュウの瞳は、背筋が凍り付くくらい怖かった。
次の瞬間、リュウが思いっきりあたしの首筋に吸い付いた。
ピリッとした甘い痛みが加わって、思わず顔を歪める。
それは首を横に振って否定しようとするあたしの動作を、いとも簡単にやめさせた。
「ノボルに会いに来たんだろ?」
違うよ。
違うのに。
そう言いたいのに。
リュウがそうさせてくれない。
「なんとか言えよ」
「や、やだっ」
続きを始めようとしたリュウの胸を力いっぱい押し返す。
黒のスーツからは甘ったるい香水の匂いがして、押し返す手に思わず力が入った。



