周りを見る余裕なんかなくて、ただ不機嫌そうにあたしを引っ張るリュウに付いて行くので精一杯。
だけどその中でも、下の階はさっきまでいたフロアとは比べ物にならないくらい高級だってことが伝わって来た。
何度も思わされて来たけど、やっぱりリュウとあたしじゃ住む世界が違うんだ。
そう思うと、胸が張り裂けそうな程苦しくなった。
VIPルームと表記された扉を勢い良く開けたリュウは、腕を強引に引っ張ってあたしをソファーへと押し倒した。
「痛っ……」
その仕草があまりにも乱暴すぎて、背中が激しくソファーに打ち付けられる。
今日のリュウはいつもと全然違う。
「あいつとなにしてたんだよ?」
追い詰めて来るような視線は、あたしの中の本心を見透かそうとするようで本当に居た堪れない。
「ただ話してただけだよ……っ」
それ以外なにもない。
だけどリュウは、ますますその顔を険しくさせた。
顔の真横に付いたリュウの腕と体に閉じ込められて身動きが取れない。
「腕まで組んで、どんなこと話してたんだ?お前ら、二人で話す程仲良かったのか?」
明らかにあたしとノボル君の仲を疑うようなリュウの瞳。
ウソはつけないと悟ったけど、本当のことを言うわけにもいかない。
「なにも、ないよ」
そんなの答えになってないけど、こういうしかなかった。



