リュウは少しずつ、あたし達の元へ近付いて来る。
「別になんもないっすよっ」
「お前は黙ってろ」
ノボル君が必死になって否定しても、リュウは聞く耳を持たない。
ひしひしと感じる視線にたまりかねて顔を上げる。
鋭いその視線は、真っ直ぐにあたしを射抜いていた。
「こんなひと気のないところでなにしてたんだよ?」
ここであたしが否定すれば済むだけの話なんだろうけど、少なからずリュウは勝手にここに来たあたしのことも怒っているに違いない。
っていうか、怒りの原因はそれが大半なのかもしれない。
リュウの迫力がすごすぎて、なにも言うことが出来ない。
それ以上に、胸が締め付けられて痛かった。
ノボル君の腕を掴むあたしの手元を見て、リュウの顔はあからさまに険しくなった。
「ちょっと来い」
ノボル君の腕を掴んでいたあたしの手を強引に引き剥がすと、リュウはトイレの横を通り過ぎて下へ続く階段の方へ突き進んだ。



