「ちょっといい?」
そう言ってノボル君の腕を取ったあたしは、ひと気の少ないお店の奥へ引っ張った。
「どうしたんすか?」
明らかに様子のおかしいあたしを見て、ノボル君が心配そうに首を傾げる。
「美雪さんって人がリュウの太客だって本当?」
なんでもいいから二人のことを知りたくて、ノボル君にそう訊ねた。
「辰巳さんにはそういう人が何人もいますけど……あの子は2ヶ月くらい前からここに通うようになった子っすよ。まだ若いのに太客って、どんだけ金持ちなんだって話っすよね。親も、ホストクラブで娘が大金貢いでるって知ったら泣きますよ」
色々教えてくれたのはきっと、あたしがリュウの彼女だから。
呑気に教えてくれたけど、内心は穏やかじゃなくなっていた。
あの子は太一と浮気していた。
今は太一と付き合っていないのかもしれないけど、その事実に相当傷付けられたのは本当で。
許すことなんて出来ないし、出来ればもう二度と会いたくないと思っていた。
そんな子がリュウのお客さんだと知って、ショックを受けないはずがない。
「あの子、相当辰巳さんに惚れ込んでるみたいで……最近毎日来てるんすよ。でも辰巳さんは妃芽さん一筋なんで、変な誤解はしないで下さいね」
そう言われても
頭の中がぐちゃぐちゃだよ。
まさか、こんなところで二人が繋がっていたなんて。



