夢を売る仕事だって分かってるし、お客さんに笑顔を向けるのは当然のこと。
だけどその人にだけ特別な笑顔を向けると聞いて、ホストと客以外の関係があるように思えてならない。
お金の為と言われればそうかもしれないんだけど。
「ちょっとトイレ行って来る」
そう言って席を立ち、店の奥に向かって歩いた。
あちこちで聞こえるシャンパンコール。
体を密着させるホストとお客さんを見て、心の中に暗い影が落ちて行く。
もしかしたらリュウも
あんな風にお客さんと密着してるのかも。
VIPルームではそれ以上のことまで。
ダメだ、思考回路がどんどんネガティブな方へ進んでいく。
このままだと、あらぬ疑いまでかけてしまいそう。
疑いを晴らすように首を左右に振る。
ダメだよね、こんなネガティブ思考じゃ。
トイレは下へ続く階段のすぐ横にあった。
しばらく立ち止まったまま階段の下を覗いてみる。
この先にリュウはいるんだ。
階段から人の気配がして、思わずトイレの壁に隠れるようにして身を潜めた。



