「先ほどはとんだご無礼を……どうぞ中へお入り下さい」
扉の向こうには大理石の螺旋階段があって、それは下に向かって続いていた。
「すごーい、やっぱりここは他とは違うね」
市井さんが上げる歓喜の声を聞きながら、初めての場所に高鳴る鼓動を抑えようと必死だった。
だって、やっぱり緊張する。
ここにリュウがいるんだよね。
階段横の壁にはホスト達の顔写真が貼られていて、それが余計にあたしの中の緊張感を増していく。
下へ降りて行く度に顔写真の大きさがでかくなってるし。
「うわあ、やっぱり辰巳君がダントツだね!」
す、すごい‼
真正面に貼られた大きな顔写真に、あたしと市井さんは息を呑んだ。
他のホストとは比べ物にならないくらい大きなリュウの写真。
それだけで、リュウが圧倒的なナンバーワンであることは容易に想像出来る。
やっぱり、すごいんだ。
写真の中のリュウは、口元だけを緩めてクールに笑っている。
それはホスト辰巳の顔で、あたしには見せたことのないような顔だった。



