結局断りきれずにお店に行くことになってしまった。
先に仕事を終えた市井さんは、あたしが終わるのを近くのカフェで待っていてくれた。
「じゃあ行こっか」
「は、はい」
先陣きって歩き出した市井さんに置いていかれないよう、人混みを縫って足速に歩いた。
ホストクラブがあるこの一帯は、どこよりも眩しくてキラキラしている。
「ホストクラブにはよく行くんですか?」
隣を歩く市井さんは、あたしの顔をちらっと見て口元を緩める。
「最近は全然‼一年くらい前はお目当ての人がいたから通ってたけど」
「そうなんですか」
全然知らなかった。
そういえば、市井さんの恋愛話って聞いたことないかも。
常に合コンに行ってるイメージがある。
「立野さんは初めて?」
その言葉にゆっくり頷くと、市井さんはさらに目を細めて笑った。
「そっか〜、じゃあ楽しみだね」
呑気に言った市井さんだけど。
リュウが接客してるとこ、あんまり見たくないかも。
でも、気になる。
そんなどっち付かずな考えが頭を支配していた。



