「ここ……よく来たよな」
感慨深く、しみじみと言う太一。
思い出話なんてしたくないし、早く帰りたいから本題に入って欲しいんだけどな。
アンティーク調のレトロな雰囲気を醸し出している店内。
中央にある鳩時計が、その雰囲気をより深く魅せている。
豆から挽くコーヒーは、どこのお店のよりも美味しくてあたし好みで。
よく来てたけど、最近は全然。
久しぶりだけど、今日はコーヒーを美味しく飲める雰囲気じゃない。
「妃芽って、実はあんな男がタイプだったんだ?」
運ばれて来たカプチーノに手を伸ばしたところで、太一の声が聞こえて動きを止めた。
あんな男って、ノボル君のことを言ってる?
それよりも、その口調に刺々しさを感じて嫌悪感を抱いた。



