「ノボル君は今からお店?」
人の波に呑まれないよう、ノボル君はあたしのすぐ隣に立った。
「そうっす。俺、実はカフェでもバイトしてるんすよ。ちょうど今終わったんで今からお店っす」
「そうなの⁉頑張ってるんだね」
掛け持ちか。
「元気だけが俺の取柄なんで」
なんて言って恥ずかしそうに笑うノボル君の笑顔は、最高に眩しかった。
腕時計をちらっと見た後、遅れそうだったのか「じゃあ、また」とだけ言ってノボル君は小走りで行ってしまった。
すると、その瞬間
柱の影からよく知る人が現れた。
「久しぶりだな」
付き合っていた頃と全く変わらないその様子に、違和感ばかり感じてしまう。
「う、うん。久しぶり」
って言っても、あたしはそうでもない。
「今の男が新しい彼氏?髪型とか、チャラすぎじゃねぇ?妃芽には似合わねぇよ」
一瞬、耳を疑ってしまった。



