「妃芽が太一をすごく好きだったのは知ってるし……なんか悔しいよ、許せない」
自分のことのように怒ってくれる亜希は、昔から全然変わっていない。
そういう真っ直ぐなところが、亜希のいいところ。
「ありがとう……もう吹っ切れてるから、心配しないで?ね?」
アイメイクがバッチリ施された亜希の瞳を見つめて微笑む。
「ならいいけどさ。てか、その時に頼ってくれなかったのがショックだよ。あたし達の仲なのに〜」
ムスッと唇を尖らせる亜希は、通りかかった店員さんを呼び止めてビールを注文した。
「ごめんね、あの時は誰にも知られたくなかったんだ」
知られたら、別れろって言われるのが目に見えていたから。
それにね、太一がそんなことをする人だなんて他の誰にも知られたくなかった。
皆の目には、優しくて自慢の彼氏として映ってて欲しかった。
不幸な女だと、知られるのが嫌だった。
「まぁわからなくもないけどね。でも、今度からはちゃんと言うように!」
「うん」
そう返事をすると、亜希は満面の笑みを浮かべた。



