「とにかく行くから」
「わ、わかった」
強く言うリュウには、やっぱり敵わない。
「ちょ……リュ、ウ?」
突然、リュウがあたしの上に覆い被さって来た。
あまりの近さと、リュウの整った顔立ちに鼓動が大きく飛び跳ねる。
そんなに真剣な顔をされると、なにも言えなくなる。
「夜中、カバンの中でバイブ鳴ってたけど?」
「えっ⁉ウソ……」
まさかその相手って……太一⁉
リュウは覆い被さったままの格好で言葉を続ける。
「夜中に掛けて来るような奴なんて一人しかいねぇし、思い出したらイライラして寝付けなかった」
「ご、ごめんね」
「いや、俺に余裕がねぇだけだし……今までで、こんな気持ちになったのは初めてだよ」
ドクンと鼓動がまた大きく鳴った。
嫌な思いをさせてしまったことへの罪悪感と、過去を匂わせるようなその言葉に胸に鋭い痛みが走った。
なんとも複雑な気持ち。



