「け、化粧品とか着替えとか……ないから」
今日は部屋に帰っちゃダメ?
しどろもどろになりながらそう言うと、リュウはピタリと足を止めてあたしを見下ろした。
な、なに?
意外にも真剣なその瞳に、鼓動がトクンと鳴る。
「元彼……待ち伏せてるかもしれねぇんだろ?」
不機嫌そうなリュウの声を聞いてハッとする。
あ……
そう言えば、リュウに電話の内容聞かれてたんだ。
「それはっ」
口ごもるあたしに、リュウは続ける。
「んなところに、帰したくねぇ。だから俺んとこに来いよ。一緒に寝んのが嫌なら別の部屋で寝てやるから」
リュウはいつだって、あたしのことを考えてくれてるね。
ホテルに無理やり誘った時だってそう。
一切手を出して来なかった。
あたしの為にそう言ってくれてるのに、あたしはいつもそれに気付かない。
なんてバカなんだろう。



