最初はその優しいところが好きだったけど、いつの間にかそこが大嫌いな部分に変わっていた。
誰にでもいい顔をする最低な男。
ただ八方美人なだけで、太一が持つものは優しさなんかじゃないって今ならはっきりわかる。
苦しくて辛くて、涙が一筋頬を伝った。
雑踏もなにも耳に入らない。
あるのはただ、どうしようもないくらいの胸の痛みだけ。
このまま1人になりたくなくて、あたしは夜の街を彷徨い続けた。
なにも考えたくないのに、仲良く寄り添っていた2人の姿が頭から離れない。
あたしは暗い路地裏に身を潜めて、流れる涙をそっと拭った。



