「ほら」
遠慮がちに目の前に差し出されたあたしのスマフォ。
「あ、うん……」
ぎこちなく手を伸ばす。なんだか気まずくて、リュウの顔を恐る恐る見上げた。
その顔はあの日と同じように無表情で、茶色がかった瞳が真っ直ぐあたしの顔を見つめていた。
この瞳に見つめられると、心臓が鷲掴みされたみたいにキュッと疼く。
まさか、助けてくれた……?
リュウの言葉が頭から離れない。
でも、あんな会話を聞かれていたのかと思うと情けなく感じた。
だけど、ありえないくらいにドキドキしている自分もいて
よくわからない。
「……いつから聞いてたの?」
気配とか全然感じなかったし、お店の扉が開く音もしなかった。
いや、聞こえてなかっただけか。
そんなことを考えながら、スマフォをカバンの中へしまう。
「最初から。出てくのが見えたから……思わず」
「そっか……みっともないとこ見られちゃったね」
「別に……んなことねぇよ」
「…………」
小さなリュウの声は、さっき電話をしていた時と比べるとまるで別人。
さっきまで太一と電話していたけど、もうそんなことは頭になくて、今目の前にいる無表情のリュウのことでいっぱいだった。



