なにも見えてなかった自分に嫌気が差した。
「あたし、太一があの子と一緒に歩いてるとこ見たし……みゆちゃん……だっけ?腕とか組んで、どう見てもカップルにしか見えなかったけど?」
あの時はショックだったけど、そのおかげで今のあたしがあるんだって思う。
今だからこそ、そう思える。
「別に付き合ってねぇよ。腕だって、向こうが勝手に……とりあえず、ずっと待ってるから」
太一にしては、珍しく面倒臭そうな声。
「いい加減にしてよ……あたし、話すことなんてないって言ったよね?」
「…………」
いい加減、納得してよ。
面倒臭いけど、太一が納得するまでは説得し続けるしかない。
そうしないと、また掛かって来そうだもん。
「お前はそれでいいわけ?2年半も付き合ったのに、電話だけで『はい、さよなら』って……そんなんで納得出来るわけねぇだろ⁉少しは俺の身になって考えろよ」
こんなに荒々しい口調の太一は初めてだけど、この言葉にはあたしも我慢出来なかった。
「じゃあ太一は……あたしの身になって考えてくれたことなんてあった⁉浮気はやだって言ってんのに、直らなかったよね?あたしがどれだけ傷付いたかわかってんの?」
今更こんな言い合いは無意味だけど、太一に言われた言葉がどうしても許せなかった。



