太一の肌に染み付いた甘ったるい香水の香りに、さっきの女の子の声がフラッシュバックした。
気持ち悪い。
「やだっ!」
背筋がぞわっとなって、気付けば太一の胸を手で思いっきり突っぱねていた。
「ごめん、帰る」
太一に気持ち悪いだなんて感情を抱くことが初めてで、自分自身その心境の変化にびっくりした。
多分もう、それくらい太一が信じられなくて幻滅してたんだと思う。
なのに目には涙が溢れているっていう自分でも認めたくない現状を、早くどうにかしたかった。
「……じゃあね」
それだけ言い残して、逃げるようにそこから立ち去った。



