俺様ホストに愛されて



「やーっと、主役のお出ましだ」



「辰巳、10分遅刻やぞ!」



「うおっ、かっけぇ」



どうやら、辰巳って人が現れたらしい。



次々にみんなが声を掛け、一部からは歓喜の声が上がる。



あたしは目の前のカクテルグラスをギュッと握り締めて固まっていた。



だって、もう十分雰囲気に呑まれてますから。



とてもじゃないけど、おめでとうだなんてにこやかに言える状況じゃないよ、これ。



向こうからしてみれば、あんた誰?的な感じだろうし……



っていうか



部外者じゃん、あたし。



やっぱり、帰ろう!



思い立ったら即行動派のあたしは、スツールに腰かけたまま、テーブルの下に置いていたカバンを手にして立ち上がった。



俯きながら人の波を避けるように扉へ向かおうとすると



「待って」



そう言われて、誰かに腕を掴まれた。